高齢者のデジタル参加を支える目黒区商店街振興組合連合会のスマートフォンレンタル施策事例

目黒区商店街振興組合連合会(以下 区商連)は、目黒区商店街の活性化に向けて様々な活動を推し進める地域団体です。商業者同士や地域住民とのつながり、さらに地域全体の交流を促進するため、商店街を大切に育んでいます。近年は高齢者向けにスマートフォンを貸与し、デジタル商品券の活用を促進する取り組みに注力しているとのことです。この施策の詳細や背景について、区商連 事務局長の倭文(しとり)氏にお話を伺いました。
施策の背景
――最初に貴団体の活動内容について教えていただけますか。
目黒区商店街振興組合連合会は、目黒区にある複数の商店街事業者が所属しています。活動の一環として、特に近年遅れが目立つデジタル化に注力しており、地域全体の経済活動や住民サービスを支える基盤づくりを進めています。
――高齢者向けのスマートフォン貸与を行った背景について教えていただけますか?
この施策の背景には、地域の高齢者を取り巻くデジタルデバイド(情報通信技術の利用可能者と不可能者の間の不平等)の解消がありました。特に目黒区では、高齢者のデジタル技術の利用が遅れており、地域全体のデジタル化が進む中で、高齢者がその波に乗り遅れないようにすることが課題となっていました。そこで区の要請を受け、スマートフォンを貸与することでデジタル商品券を高齢者にも利用してもらい、日常生活での利便性向上を目指しました。これは単なる商品券のデジタル化にとどまらず、高齢者が安心してデジタル技術に触れ、学べる環境を提供することが重要な目的です。
レンタルマーケットのサービス導入を決めた3つの理由とは?
――レンタルマーケットとの出会いについて教えてください。
ある通信事業者からの紹介で御社のサービスを知りました。数ある選択肢の中でレンタルマーケットを選んだ理由としては、まず価格が安かったこと。また短期レンタルに対応している点も大きな決め手でした。他社サービスは1年以上の長期間にわたるレンタルが前提である一方、レンタルマーケットでは期間を自由に指定できるのが良いと思いました。さらに、今回のような短期間での高齢者向け施策においては機種の統一が非常に重要で、同一機種を550台というまとまった数量で提供してもらえた点も大変助かりました。他の会社では、説明が通信サービスに限られたところもありましたが、御社は丁寧にサポート内容を提案してくださり、安心してプロジェクトを進めることができました。
MDMによるセキュリティ強化と高齢者のデジタル体験向上
――高齢者にスマートフォンを貸与する際の課題は何でしたか?
高齢者の中にはスマートフォンを初めて手にする方も多く、操作への不安が大きいことが予想されました。そのため、操作をできる限りシンプルにする工夫が必要でした。具体的には、レンタルマーケット側で事前に専用アプリをインストールし、不要な操作を防ぐためにスマートフォンをカスタマイズして頂きました。また、詐欺や個人情報漏洩のリスクが大きな懸念となるため、レンタルマーケットの協力のもと、MDM(IT機器を一元的に監視・管理するための仕組み)を導入し、不正アクセスや誤操作を防ぐセキュリティ対策を強化しました。安心してデジタル商品券を利用できる環境を整えるにあたり、レンタルマーケットのサポートが支えになりました。
――機器の貸し出しや運用はどのように行いましたか?
レンタルマーケットが全て同一機種のスマートフォンを用意し、各端末をシリアルナンバーで管理することで、紛失やトラブルを防ぎました。貸出の際には、各端末が管理台帳に登録され、問題が発生した場合でも迅速に対応できる体制をレンタルマーケットが整えてくれました。
レンタルマーケットから配送されてきたスマートフォンは、すべて充電ケーブルや操作マニュアルが同梱されており、到着したその時から使えるように丁寧な準備がなされていました。こうして細やかに対応いただいたこともあり、トラブルが少なく、サポートの効率も非常に高まりました。
スマートフォン操作の壁を乗り越える:高齢者向け説明会の実施
――利活用促進に向けて行った活動や、サポート体制について教えてください。
デジタル商品券の利用方法を高齢者に理解してもらうために、説明会を複数回にわたって開催しました。説明会では、実際にスマートフォンを操作しながら、デジタル商品券の購入方法やアプリの使い方を体験して頂きました。説明会以外にも、個別に訪問して、説明を実施したこともあります。
――このプロジェクトで直面した具体的な課題やトラブルはありましたか?
高齢者にとって、スマートフォンの操作は大きなハードルでした。充電の問題や操作方法に関する問い合わせがありましたが、同一機種のスマートフォンを使用していたため、サポートが迅速で一貫性があり、スムーズに対応できました。QRコード決済に対応している店舗が少なかったため、今後は商店街全体での普及が不可欠だと感じています。
――利用者からの反応はいかがでしたか?
非常に好評でした。利用者からは「初めてスマホで買い物ができて嬉しかった」や「区民サービスとして素晴らしい」といったものだけでなく、「また次回デジタル商品券を発売される時は、このような使い方ができるのであれば、また使いたい」や「スマートフォンが使いやすかったので、端末を返却した後に自分用に買った」という声が寄せられました。説明会やサポートもスムーズに進み、同一端末を使うことで操作の混乱もなく、利用者からの満足度は非常に高かったです。
――今後の展望についてお聞かせください。
デジタル商品券を利用できる店舗数を増やして、利便性をあげるということです。商品券をデジタル化することによってコストの削減につながったかと聞かれることもありますが、システムの初期費用が発生したので、今回に限っては紙の時と同程度だった印象です。来年以降も実施することで抑えていきたいと思います。また、デジタル商品券に関する施策だけでなく、オクトーバー・ランアンドウォークイベントなどのウォーキング施策を行い、目標を達成された区民には、デジタルポイントを目黒区商店街連合会アプリ「めぐーる」上で進呈することも行っています。これにより、地域住民が健康増進とデジタル化の両面で恩恵を受けられるような新たな取り組みを展開していく予定です。目黒区商店街全体のデジタル化を加速させ、より多くの住民がデジタル技術に触れる機会を提供していくことが今後の重要な目標です。
――弊社に期待されていることなどはございますか?
レンタルマーケットには今回のプロジェクトで大変お世話になりましたが、今後の展望としては、端末の回収業務なども含めたパッケージサービスの提供をお願いできればと思っています。今回では、端末の貸与やサポートを別々の業者に依頼しましたが、レンタルマーケットで一括して対応いただければ、効率が格段に向上するのではないかと期待しています。特に高齢者向けの施策では、サポートの一貫性やスムーズな運用が重要になるため、そのような部分でのさらなるご協力をお願いしたいと考えています。
――最後に、このプロジェクトの総括をお願いします。
今回のデジタル商品券プロジェクトを通じて、目黒区商店街のデジタル化が一歩前進したことは大きな成果でした。特に高齢者に対して、スマートフォンという新しい技術を安全に提供し、さらにデジタル商品券という利便性の高いツールを実際に使っていただけたことが大きな成功と言えます。レンタルマーケットのサポートにより、安心してプロジェクトを進めることができたことも感謝しております。今後も、梱包や端末管理、サポート体制のさらなる改善を図り、より多くの店舗でデジタル商品券を活用してもらえるよう努めていきたいと考えています。 また、今回の施策を通じて見えてきた改善点を活かし、次回のプロジェクトでは、より高齢者がデジタル技術を身近に感じられるようなサポート体制を構築していく予定です。商店街全体のデジタル化をさらに推進し、地域社会の活性化と住民サービスの向上を目指して取り組んでまいります。