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2024.04.26

社内研修プログラムの設計方法を解説!種類ごとの内容・効果や進め方

社内研修とは、外部に研修を委託するのではなく、社内の人材が講師役を務め、研修を実施する教育方法です。特に、自社のフローに最適化された業務のノウハウをはじめとした、実務に役立つ技能を伝える際に役立ちます。

社員の階層や職種、研修のテーマに応じて、どういった研修形式が効果的なのか、どのように教えればよいのかは異なります。これから社内研修のプログラムを設計するならば、設計方法について事前に知っておくのが大切です。

この記事ではHR担当者に向けて、社内研修プログラムの設計方法や講師の選び方について詳しく解説します。

目次

  1. 1.社内研修の種類は大きく分けて2つ
    1. 1-1.社内研修の種類|研修内容・対象別
    2. 1-2.社内研修の種類|実施形式別
  2. 2.効果的な社内研修実施に向けたプログラムの設計方法と進め方
    1. 2-1.手順1.現状の課題の洗い出しと分析
    2. 2-2.手順2.社内研修の目標・ゴールを設定
    3. 2-3.手順3.社内研修プログラムの策定
    4. 2-4.手順4.ルール作成と研修後の対応
  3. 3.社内研修を担当する講師の選び方
    1. 3-1.豊富な知識・ノウハウを有しているか
    2. 3-2.円滑なコミュニケーションが取れるか
    3. 3-3.研修内容が分かりやすいか
  4. 4. 社内に講師が見つからない場合の対処法
  5. まとめ

 

1. 社内研修の種類は大きく分けて2つ

社内研修の種類は、大きく分けて「OJT研修」と「OFF-JT研修」の2つがあります。

OJT研修の特徴

OJT研修とは、実際の業務を通じて知識とスキルの習得を図る研修方法です。OJTは「On the Job Training」の略です。

OJT研修では、実務経験の豊富な上司・先輩社員が教育担当となって、部下や後輩社員をマンツーマンで指導します。研修内容が実際の業務そのままであるため、業務に必要な知識とスキルを習得しつつ、実務経験も積める点がメリットです。研修を受ける社員が教育担当とコミュニケーションを取りやすくなり、人間関係の構築にも役立ちます。

OJT研修のデメリットは、社員1人の研修に多くの時間がかかり、現場の負担が大きくなる点です。

研修の質は教育担当の指導能力によって変わるため、OJT研修では研修の成果が均一化しにくい点にも注意してください。

OFF-JT研修の特徴

OFF-JT研修とは、通常の業務とは別の機会を設けて知識とスキルの習得を目指す研修方法です。OFF-JTは「Off the Job Training」の略で、集合研修と呼ばれることもあります。

OFF-JT研修は、研修対象者の社員を集めて同一のプログラムで教育を進める内容が多く、内容について高度なスキルを持つ人材が講師役を務めるケースがあります。対象者全員が同時に研修を受けられるため、研修の成果をある程度均一化することが可能です。

多数の社員が一度に研修に参加できるOFF-JT研修は、現場の負担が大きくならない点もメリットに挙げられます。

OFF-JT研修のデメリットは、研修対象の社員を一度に集めるためのスケジュール調整が難しい点です。参加者全員を収容できる社外の会場を借りたり、大規模に資料を作成したりするなど、さまざまなコストがかかる可能性もあります。

また、社内研修の種類は研修内容・対象者や、実施形式の違いによってより細かく分類できます。

以下では、社内研修の種類を「研修内容・対象別」と「実施形式別」に分けて解説します。

 

1-1.社内研修の種類|研修内容・対象別

社内研修の種類を研修内容・対象別で分類すると、「階層別研修」「職種別研修」「テーマ別研修」の3つに分けられます。

階層別研修の特徴

階層別研修は、社員を年齢・役職などで階層化し、各階層に必要な業務知識教育とスキルアップを支援する研修方法です。例として、新入社員研修・若手社員研修・中堅社員研修・管理職研修という分け方が挙げられます。

階層別研修を導入すると、社員が現在属している階層に応じた研修を実施できます。研修によって、どのような役割が求められているか、キャリアアップには何が必要かを自覚するきっかけを作れるでしょう。

階層別研修の内容は画一的であることが多く、社員の状況に合わせた教育は難しい点に注意してください。研修後は、社員の理解度・習熟度に応じたフォローも必要です。

職種別研修の特徴

職種別研修は、社員が担当する業務内容に合わせた職種特化の研修です。営業職向けに営業手法の指導をしたり、企画職向けに情報活用やマーケティング思考の教授を行ったりなどが職種別研修の例として挙げられます。

職種によっては、職種内での階層化を行って職種別研修を実施することもあります。エンジニアのように対象者で知識・スキルの違いがある職種で、新人エンジニア研修・中堅エンジニア研修といった階層化による研修が行われるケースが主な例です。

企業ではさまざまな職種の人材が働いているため、すべての職種で研修を実施できるとは限りません。職種別研修を導入する企業は、自社で働く社員の職種を把握し、研修が必要となる職種を判断する必要があります。

テーマ別研修の特徴

テーマ別研修は、社員自身が課題を感じている能力の開発や、企業側が社員に身につけてほしいスキルの習得を目指す研修です。主な例としては、コミュニケーション能力研修・ITスキル研修・マネジメント研修・ビジネスマナー研修などが挙げられます。

テーマ別研修は豊富な種類が存在します。社員がどのような研修内容を求めているか、自社が社員に身につけさせたいスキルは何かといった情報の洗い出しを行い、実施する価値の高い研修を導入しましょう。

テーマ別研修は指導担当者に専門的な知識と高い指導能力が求められるため、社外の講師を招くケースが多い傾向にあります。

社内研修を研修内容・対象別で分けて考えると、社員に受けさせるべき研修の方向性が具体的にイメージできます。

自社にとって必要性が高い研修を選び、適切な対象者に研修を実施しましょう。

 

1-2.社内研修の種類|実施形式別

社内研修を実施形式別に分けると、「座学」「グループワーク」「ロールプレイング」「オンライン・eラーニング」の4種類があります。

座学

座学は、研修会場に参加者全員が集まり、講師による講義を通じて学ぶ研修方法です。OFF-JT研修で一般的に用いられる実施形式であり、参加者全員が基本的な知識を身につけられます。

座学で習得できる内容はあくまでも基本的な知識のみであり、座学のみの研修では実践や応用が身につきません。学んだ知識を業務で活用するには、他の実施形式も併用しましょう。

グループワーク

グループワークは、参加者を数人単位のグループに分けて、研修テーマについて議論・課題解決・発表を行う研修方法です。主に座学と組み合わせて行われるケースが多く、座学で学んだ知識をもとにテーマについての議論などを進めます。

グループワークはテーマについての理解を深めるとともに、コミュニケーション能力や論理的思考力、リーダーシップなども磨くことができます。

ロールプレイング

ロールプレイングは現場や業務で起こり得る場面を作り、設定された役割を参加者が演じながら、業務に役立つ知識やスキルを習得する研修方法です。「ロープレ」と略して呼ばれることもあり、接客や営業などの業務があるサービス業で主に取り入れられています。

ロールプレイングによる研修は、特定の場面や業務における役割を参加者が体験し、対応の流れや課題を発見して改善につなげられる点がメリットです。

ただし、場面・役割の設定にリアリティが欠けていると効果が薄れます。ロールプレイングの効果を高めるには適切な設定の作成が必要です。

オンライン・eラーニング

オンライン・eラーニングは、Web会議システムなどを使用してパソコン・スマートフォンといったデバイスから参加できるオンライン研修です。時間・場所に左右されることなく参加できて、多人数の受講にも対応できるメリットがあり、社内研修への導入が増えています。

オンライン・eラーニングで社内研修を実施する際は、参加者の集中力が途切れないようにすることが大切です。研修内容にグループワークやゲームを取り入れるとよいでしょう。

それぞれの実施形式は、座学とオンライン・eラーニングが受動的な研修になりやすいのに対し、グループワーク・ロールプレイングは主体的な学習ができます。

社内研修ではなるべく主体的な学習ができるよう、複数の実施形式を組み合わせることがおすすめです。

 

2.効果的な社内研修実施に向けたプログラムの設計方法と進め方

社内研修を導入するには、どのような研修内容が必要なのかを分析し、適切な研修プログラムを設計・実施することが重要です。

社内研修を効果的に実施するための研修プログラムの設計方法と進め方を解説します。

 

2-1. 手順1.現状の課題の洗い出しと分析

まずは経営層や現場管理者、現場で働く社員からのヒアリングを行って、現状の課題の洗い出しを行います。研修の対象者があらかじめ決まっている場合は、研修対象の社員からのヒアリングに重点を置いてください。

現状の課題は、社員の業務内容・役職・勤続年数などによって異なります。多くの研修では課題解決が主な目的となるため、課題の洗い出しは徹底的に行いましょう。

課題の洗い出しと同時に、課題について分析も行います。課題の分析では、課題が短期的な取り組みで解決可能なものか、もしくは中長期的な取り組みが必要かを分けることが大切です。課題解決によって得られる効果が、研修を行うコストに見合っているかも検討します。

洗い出した課題はホワイトボードなどに書き出し、分析による評価でまとめておくと、視認性がよくなって研修プログラムの設計がやりやすくなります。

 

2-2. 手順2.社内研修の目標・ゴールを設定

次に、洗い出しと分析をした課題の内容をもとに、社内研修の目標とゴールを設定しましょう。

社内研修の目標は、研修を通して参加者に達成してほしいポイントの中から段階を踏んで設定します。例として、「高度なコミュニケーション能力の習得」であれば、初期目標に「自分の意見をまとめる」ことを設定し、中間目標に「他人と議論する」を設定しましょう。目標を段階的に設定すると、社員の研修への取り組みを達成度で評価できるようになり、後の研修評価に役立てられます。

社内研修のゴールは、研修の最終的な目標の達成です。ゴールを設定するときは、段階的に設定した目標から連続して達成できる内容であり、ゴール達成によって課題解決ができているかを確認してください。

 

2-3. 手順3.社内研修プログラムの策定

社内研修の目標・ゴールを設定した後は、目標とゴールの到達を実現できる社内研修プログラムの策定を行います。

社内研修プログラムの策定で決めるべきことは、主に下記の内容です。

  • 研修の具体的なテーマ
  • 研修方法
  • 研修計画と研修項目の作成
  • 研修の対象者
  • 研修の各段階における目標
  • 実施時期と日程
  • 実施会場と予定人数
  • 講師の選定
  • 研修前後の提出物
  • 評価基準と研修後フォローの内容

など

また、社内研修を外部に委託する場合には、外部の講師との打ち合わせや予算・日程の調整なども必要です。

 

2-4. 手順4.ルール作成と研修後の対応

研修プログラムの策定後は、研修プログラムの運用ルールを作成し、研修後の対応についても準備を進めます。

研修プログラムの運用ルールとは、研修プログラムを企業の制度として運用するために必要な基本的な決まりのことです。「研修実施前の準備を誰が行うか」「社員への研修告知をどのように行うか」などを決定し、社内研修が体系的に実施できるように運用の管理を行います。

研修後は、「研修内容が身についているか」「業務で活用できているか」をアンケートや理解度確認テストなどで調査し、研修の有用性について評価をします。思わしくない結果がある場合は原因を分析し、次に開催する研修に向けて改善を進める仕組みづくりが必要です。

 

3.社内研修を担当する講師の選び方

社内研修を実施するにあたっては、研修参加者への指導などを行う講師を選定する必要があります。

社内研修を担当する講師の選び方は、以下で紹介するポイントを押さえましょう。

 

3-1.豊富な知識・ノウハウを有しているか

社内研修を担当する講師には、研修テーマについての豊富な知識と業務で役立つノウハウを有していることが求められます。該当する分野の最新動向に詳しく、研修を通じて参加者に知識・ノウハウを教授できるかどうかで人材を選びましょう。

社内で豊富な知識・ノウハウを有している人材を探すには、人材の業務知識やノウハウを客観視できる人事評価制度の導入が必要です。専門業務についての検定や360度評価などで能力を評価できる体制を整えることで、社内研修の講師を任せられる人材探しを適切に進められます。

ただし、仕事ができる社員やノウハウを持つ人材が、そのまま優れた講師であるとは限らない点に注意しましょう。豊富な知識・ノウハウを有していること以外にも、コミュニケーション能力や説明力・指導力の高さもチェックする必要があります。

 

3-2.円滑なコミュニケーションが取れるか

講師候補の社員が、参加者と円滑なコミュニケーションが取れるかを検討しましょう。

講師役の社員に求められるコミュニケーション能力は研修の種類によって異なります。1on1で行うことが多いOJT研修であれば、1人の参加者と対面で指導できる能力があれば十分です。

しかし、OFF-JT研修などの研修では、多人数の参加者をまとめて指導する能力が必要です。参加者に講義やワークの提示を行いつつ、参加者一人ひとりの理解度を確認したり、質疑応答をしたりしなければなりません。多人数の参加者相手であってもコミュニケーションに問題がないかを確認しましょう。

また、講師候補の社員と参加者との関係性も考える必要があります。例を挙げると、管理職研修では現職の管理職もしくは管理職候補が参加者であるため、役職の格差がある若手社員や中堅社員は講師に向いていません。参加者との間で役職などのしがらみがない講師を選ぶことが大切です。

 

3-3.研修内容が分かりやすいか

社内研修を担当する講師には、研修内容を分かりやすく説明できる説明力・説得力が求められます。「研修内容が分かりやすいか」は講師選びで重要なポイントです。

研修内容の分かりやすさで講師を選ぶ際は、想定する参加者のレベルに応じた説明ができることを重視しましょう。

例を挙げると、新入社員研修の講師には、業務知識が十分ではない新入社員相手にも分かりやすく説明できる能力が必要です。

一方で中堅エンジニア研修のように、参加者が特定テーマ・分野について知識を持っている場合は、講師はより専門的な内容を分かりやすく説明する能力が必要となります。

 

4.社内に講師が見つからない場合の対処法

社内研修を担当する講師が社内で見つからない場合は、以下で紹介する2つの対処法を実践するとよいでしょう。

社外講師に依頼する

研修会社や研修講師仲介会社に、社内研修に精通した社外講師の派遣を依頼する方法です。社外講師はプロであるため、高いコミュニケーション能力・指導力が備わっていて、高い研修効果が期待できます。

研修担当者の負担が軽減でき、研修プログラムについて第三者の意見を聞ける点もメリットです。

ただし、社外講師に依頼する場合は一般的に高額な費用が発生します。スケジュール調整や研修内容の打ち合わせも必要であり、依頼すればすぐに研修を実施できるわけではない点に注意してください。

講師ができるように社員を育成する

社内講師の役割を担えるように社員を育成する方法です。現時点では講師ができる人材が見つからなくても、適性が高い人材を教育して模擬研修などの練習を重ねることで、社内研修を内製できる講師に育成できます。

社員を講師に育成する方法は、人材育成費用や時間というコストがかかるものの、内製化によって研修にかかる費用を抑えられます。研修ノウハウの蓄積により、社内研修の効果を高めやすい点もメリットです。

社内研修の講師を社外講師に依頼するべきか、社内で育成するべきかは、社内研修で取り扱うテーマによっても違いがあります。

社内では精通している人材がいないテーマや、専門分野の最新動向などを学ぶ内容であれば、社外講師に依頼するほうが適切です。

一方で、企業の基本業務を学ぶ新卒研修や、組織内の業務知識・ノウハウを共有するために行う研修であれば、社内で講師を育成したほうがよいでしょう。

 

まとめ

社内研修は大きくOJTとOFF-JTの2種類に分類でき、それぞれ異なる目的とメリットを持ちます。効果的な研修実施のためには、現状の課題分析、研修の目標とゴールの設定、具体的なプログラムの策定、そして研修後のフォローアップが必要です。

また、社内の人材から講師を選ぶときには知識やノウハウの豊富さだけでなく、コミュニケーション能力や分かりやすく説明する能力もチェックしてください。社内で適切な講師が見つからない場合は、専門性が高い内容であれば社外講師に依頼するのがおすすめです。対して、新卒研修など専門性が低いテーマであれば、社内で講師を育成し、社員のスキルアップと成長を促すとよいでしょう。